| 優勝カップが浦和にやってきたヤーヤーヤー!! ----------------------------------------------------
それはまだ僕が終着点の浦和美園駅まで 二 つの乗り換えを挟んだ駅での光景である。 アウターの中からチラつく赤いユニフォーム、巻かれた赤いマフラー、背負われた赤いバッグ、爪に塗られた赤いマニキュア 、そのどれもが僕に浦和レッズを想起させるには十分であった。中には浦和レッズとは関係ない赤いジャージやスポーツとは 凡そ 関係ないものまであったが、皆が皆とりあえずの“赤”を身に纏う。老若男女を問わない。そして終着地点へと近付くにつれ、大きな赤い旗や、ブレザーや学ランの中に隠していた赤いユニフォームを露わにする学生たちによって、電車の中の赤い濃度が高まっていく。それだけで、電車の中は窒息してしまいそうなほどだ。スタジアムの中に入ってしまった時にどうなってしまうのだろか。こうしてスタジアムには 62241 人が集るのだ。 いわゆるエセレッズファンで、 観戦経験のない僕は相手チームのガンバサポーターだと取り違われない様に、青い色を全身から徹底的になくし、友好を示す赤い帽子だけを被ってのり込んだものの、スタジアムに近付くに連れて心細くなっていくのを感じていた。ただ、その一方で SOJ の活動の中で幾度となく聞いてきた質問である、スポーツが文化とは何か と いうことの一つの答えはこれなのだろうという予想は確信に近づいていった。 ![]() 12月最初の土曜日、勝ち点は3、得失点差で2上回る浦和レッズは、二位のガンバ大阪をホームの埼玉スタジアム 2002 にて3−2で下して、初のシーズン優勝を飾った。 これは日本、そして日本のスポーツ界において大変重要な出来事であったのではないか。 優勝を決めたその瞬間、僕の近くのサポーターの泣き出すものが多いことに、驚きながら僕は一人スタジアムの中で取り残されていたのだろう。 それと同時に今年の北海道日本ハムの日本一に対して 『 Sports Graphic Number 』 に、作家で中日ファンの奥田英朗が寄稿していたものを思い出した。それはホームタウンを北海道に移転して3年目で優勝を手にした道民に対して、日本の野球ファンは皆チームの長期低迷であったり、主砲の移籍があったりと苦しいこと経験したことがあると ともに、機会に恵まれた道民たちにもそういった一連の暗い部分が待っているなどと、優勝への悔しさをたっぷりにじませて書いていた非常に面白い文章である。 ・・・レッズは酸いも甘いも知っているとは優勝した翌日のどの新聞をとって書かれていることである。 J リーグ開幕の '93 年緑色のチームが隆盛した時に、埼玉の赤いファンが長い間冷たい眼で見られていたこと、今でこそ浦和にいるが 小野伸二 の 移籍 も経験した。それでも、レッズファンはレッズファンであったのだ。いや、だからこそといった方がいいのかもしれない。それが、 2004 年の2 ND ステージ優勝、昨年の天皇杯優勝へと導いた。 フリンジファンとコアファンと呼び分けるスポーツビジネス界において、駒場スタジアムを 年間チケットで満席 にするレッズは何と呼べばいいのだろうか。どうして、こんなにもファンがいるのかはわからない。それは巧みなマーケティングのおかげなのか、あまりにもドラマティックなレッズの歴史なのか、埼玉という“サッカー処 ”故なのかはわからない。ただ、一つ言えるのは不遇の時代の中で培われた強靭な忍耐力でサポーターがその栄光を待ち続けたということである。感動は感動を呼ぶ。それは J 断トツの集客力となり、それは 地元企業 のスポンサードの呼び水となった。その結果生まれた潤沢な資金によって、クラブが長期的方針を立てられたことは優勝の要因の一つであると思う。 ![]() 話は 代わる が、近年地方 財政は火の車である。炭鉱都市として栄えた 北海道夕張市 は、財政再建団体と なった。その結果さまざまな“負担”が住民にかかり、住民流出は免れないといわれている。しかし、街を考え・支えるのは役所だけでの仕事ではない。そこには、行政と市民、地元の産業や企業との連携が必要なのである。現在地方自治体は2300ほどあり、その中でプロスポーツチームがあるのは50にも満たない。しかし、これらの自治体から 夕張市 の様に住民の流出が生まれるかと言われれば疑問符が付く。 少なくともレッズサポーターにとって、レッズは誇りである。そして、レッズにとって のサポーターも同様の関係であろう。ユニフォームに刻まれた“ We are REDS ”というのはまさにそれを体現する言葉だ。 試合後、優勝カップを選手から渡されて、掲げるレッズサポーターの長の姿は凄く印象的だった。浦和レッズの象徴はどの選手でもなく、その熱狂的なサポーターである。“まち”がレッズを中心に一丸となって勝ち得た最高の結果というのは、その喜びも 一入 であるのは間違いない。 優勝セレモニーが終わった後もスタジアムに残り、喜びをはじめとする様々な感情の溶け込んだ空気を味わい、恍惚とした表情でスタジアムを後にするサポーターたちは、きっと、今夜は最高に美味い酒が飲みながら、浦和あたりで一暴れするのだろう。 ![]() さいたま に生まれること。 僕はそれをこんなにも羨ましく思った日は未だかつてない。 12月4日 篠 雄也 [Shino's Works Review] 1. スポーツは何が楽しいのだろうか? 2. スポーツの輪郭 3. Like a rolling ball 4. Obrigada Zicoのその前に 5. from Number 6. 生きている実感 7. 3days 8. ノンフィクション『スポーツマンシップにのっとって』 9. スポーツまでの距離 10. プロパガンダ 11. die another day 12. スポーツ文化とは何か 13. 翼が生えた馬のディープなインパクト 14. 巨人、大鵬、卵焼き 15. 優勝カップが浦和にやってきたヤーヤーヤー!! 16. 60億の男は何に魅せられたのか 17. ジャパニーズスポーツの品格 18. 江川卓に学ぶ 19. 著書「敗因と」に込める金子達仁の言葉後 |